【書籍】鎌倉夢幻
三月に入ったばかりの静かな午後だった。
窓からはなだらかな稜線を持つ鎌倉の山並みが見渡せる。
褐色の裸木も冬の間に鋭さを失い、
かすかな風にも微妙にゆらぐ柔軟さが取り戻されている。
石山了は窓辺に座って、小一時間も煙草をふかしていた。
昨年6月に亡くなられた杉本晴子さんの著作。
妻子に去られた初老の石山が、鎌倉のどこかにある喫茶店「ハリウッド」のマスターと出会う。
鎌倉の家々の色合い、街模様まで細かく描き、その場に居るように感じられます。
晩年を鎌倉で過ごしたという原節子さんを愛し続けるマスター。
「ハリウッド」のような喫茶店が鎌倉にあるかもしれませんね。
本書の情報
鎌倉夢幻
冬花社
1,728円(税込)
